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はじめての野球ユニフォーム作り
〜スピリットをかたちにする〜

マーク加工技術編



2010年7月26日(月曜日)
「縮む・細くなる・小さくなる」

 
野球のマーキングにとって頭に入れておきたいのは、実際の加工では、設計段階よりも縮む・細くなる・小さくなるという点です。1mmにも満たない変化であることが多いのですが、1mmを問うのがマークの仕上がりです。刺繍糸はぎゅっと縫いつけて細くなりますし、ベースとなるマーク生地は熱裁断によって縮みます。
とりわけ注意したいのは、縁取りの幅と、デザイン上の小さな穴です。設計段階でのフチ幅が狭いと、実際にはさらに縮むので、あまりにも細いフチというのが技術的な困難を招きます。デザイン上の小さな穴(たとえば「B」の上下にある2つの穴)は、設計段階でしっかりあけておかないと、仕上がってみると、つぶれて見えにくくなる時があります。
 
 

2009年5月18日(月曜日)
「ウレタン入りの条件」

 
直刺繍ではウレタン入り加工(盛り上げ加工)を採用することができますが、2つ条件があります。ひとつはマーク面積が広くないこと。帽子マークのように5cm角、あるいは横広の片胸マーク(約5*15cm以内)でしたら問題はありませんが、面積が広くなっているとウレタンのために重くなったり固くなったりしてしまい、ウェアの機能性が著しく低下します。文字・数字の線の幅・太さは1cm程が限界。これ以上になるとウレタンが刺繍糸からはみ出てしまう恐れが出てきます(直刺繍自体、あまり太い線の箇所には採用できない)。また逆に、線が細すぎてもウレタン入りにはできません。今度は細すぎでウレタンが入る余地がないということになってしまいます。広すぎず、細すぎずと、ウレタン入り加工には技術的に求められるものが厳しいです。
 
 

2009年5月14日(木曜日)
「転写マークと染色マーク」

 
マーク加工法で、転写というのは特殊なインクをウェア表面に貼り付ける技法です。いわゆる圧着マークの一種と見ることもできます。一般的な圧着マークは、マーク生地と呼ばれるしっかりとした腰のある素材を貼付けますが、それがとても薄くなったものが転写と言えます。
対して、染色または直昇華と呼ばれる技法は、特殊なインクそのものをウェア生地にしみこませてしまう技法です。生地表面にとどまるのではなく中まで入っているのが転写とのちがいです。はがれたりすることはなくなりますが、染めることができるのかどうか、色がどのように染まってくるのかは、生地との相性によってきます。見た目のデメリットとしては、やはりウェアの柄として平板に見えてしまうことです。
 
 

2009年3月10日(火曜日)
「マーク生地とチドリ掛け」

 
マーク生地にはいくつか種類があり、それぞれ表面・生地目がちがっています。マーク生地そのものの良さを味わいたいときは、チドリ掛け(輪郭をジグザグに縫うだけ)がおすすめです。チドリ掛けならば刺繍糸が目立ちすぎずに、生地そのものが目にとびこんできます。しかし、せっかくのチドリ掛けですから、その刺繍の技も見たいところ。そういう時は、マーク生地目がないもの、できるだけフラットなものを選びます。そうすると、チドリ掛けのジグザグがしっかり見えます。生地目がしっかりあるもの(たとえば飾り生地目のクロス)ですと、刺繍糸が生地目に隠れて見えなくなりがちです。プロ球団のほとんどのユニフォームではチドリ掛けが採用されていますが、それらのマーク生地は生地目の目立たない種類を基本的に採用しています。
ただ、チドリ掛けを「良いなあ」と感じる人は、草野球のチームの中にはそれほど多くいない(むしろ少ない)ように感じます。「プロ球団のほとんどはチドリ掛けですよ」という情報があると納得される方もいらっしゃいますが、何も知識・背景がないときに、フラットなマーク生地+ジグザグ縫いというチドリ掛けを見ると「地味だなあ」と思ってしまうのが普通かもしれません(対して縁取刺繍や直刺繍の豪華さはとても分かりやすい)。
 
 

2008年12月19日(金曜日)
「縁取刺繍vsチドリ掛けvs直刺繍の見た目」

 
胸マークの刺繍技法はおもに「縁取刺繍」「チドリ掛け」「直刺繍」の3つがあります。
直刺繍はシャツ生地等に刺繍糸を直接縫い付ける技法です。刺繍糸のみで仕上げる気品がありますが、面積が狭い場合にのみ採用できます。
縁取刺繍はマーク生地の輪郭を縁取って、シャツに取り付ける技法です。刺繍の豪華さを取り入れつつ、広い面積に対応できます。
チドリ掛けはマーク生地の輪郭をジグザグにとめます。糸が目立たず、マーク生地の風合いが決め手となります。
近くで見たときに「おっ」と思わせるのは、やはり刺繍糸がきわだつ直刺繍と縁取刺繍です。マークに注目が集まります。チドリ掛けは反対に、マークがただ単に付いているように見えもしますが、マーク+ウェア=ユニフォームとしての一体感が魅力と言えます。
 
 

2008年10月28日(火曜日)
「マークは機能性を省みるべきか」

 
野球ユニフォームのマーキングは、デザイン性・見た目重視と言えます。機能的にははっきり言って邪魔なものです。マークをつければつけるほどユニフォームが重くなりゴワゴワしてくるものです。胸マークなんかなくても敵・味方の区別は付くでしょうし、背番号や背ネームがなくたって困りません(誕生当初からしばらく無かったほど)。
しかしマーキングがいまやなくてはならないユニフォームの要素であるのも事実です。マーキングは機能面にも配慮しつつ考えてみるべきものなのかもしれません。しかし、一番機能性に無頓着なのがプロ球団だったりします(固くて重たいと言われる2〜4重のチドリ掛けを採用するチームが多数)。
 
 

2008年9月11日(木曜日)
「タタミ縫い」

 
直刺繍(糸のみで緊密に往復して刺繍する)は、マークの細い部分には使えます。しかし面積が広くなると使えません。次の針位置までの距離があるので(といっても10ミリ弱ですが)、糸のたるみ=耐久性の弱さが出てしまうためです。広い面積を刺繍するときは「タタミ縫い」という技法を使います。糸で該当箇所を縫いつぶし、文字通り畳のような縫い目となります。縫いつぶすぐらいですから、材料費も加工時間もかかるので、その費用は通常の直刺繍の数倍になります。野球ユニフォームでは極まれに、ワッペンや帽子マーク、袖マークで使われます。
 
 

2007年12月13日(木曜日)
「軽さ、薄さ」

 
ここ数年、野球ウェアはユニフォームもコートも、軽く、薄くなる傾向にあります。たとえば、シャツはニット素材からメッシュ素材が主流になりましたし、コートはもこもこしたものからウィンドジャケット風のものが中心になりました。
マーキングもその傾向・影響のなかにあって、どんどん軽さ・薄さが求められています。しかしマークは飾り付けるもの。厚さや重さが加わるのはあたりまえ。薄く・軽くなることで、その良さが失われてしまわないようにも配慮しなければなりません。マーキングの世界は今これから変わり始めるかもしれません。

 
 
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