野球コートの種類
野球コートは、広く言えば秋冬向けのアウターです。肌寒い春先にも活躍するアイテムです。
グランドコート
野球アウターでは従来、「グランドコート」が主流でした。移動やベンチで着用するのが主な使用方法です。良くも悪くも、厚手でもこもこし、温かさ重視のアイテムです。
「グラコン」「ベンチコート」「スタジャン」(スタジアムジャンパー)と呼ばれたりもします。
寒冷地の草野球では、このグランドコートを着たままで練習する、試合に臨む、ということもあるようです。
基本的には前開きタイプで、立衿が付き、袖先や裾にリブ仕様がほどこされています。シルエットはややゆったりめ。裏地には起毛タイプの素材、いわゆる裏起毛を採用することが多いですが、これはグランドコートの価格帯によります。
マークを付けると1着あたり10,000円を超えることがほとんどです。高額なため、グランドコートは近年、敬遠されがちですが、学生野球、高校野球、リトルリーグ、シニアクラブでは、まだまだ秋冬アウターの本命です。
セカンドコート
2000年代初頭から続々と登場してきたのが「セカンドコート」と呼ばれるもの。グランドコートをベースとしつつ、素材や構造をシンプルにし、かつシルエットも普通か、ややしぼることで、練習やアップで着用することもできるようになりました。裏地はつるつるとしたタフタ系(ウィンドブレーカー系)を採用することも多いです。その方が腕を動かしたり、体をひねったりする時のひっかかりが少ないからです。
セカンドコートは、かぶって着る(プルオーバー)タイプのコートのこと、いわゆる「Vジャン」(V衿ジャンパー)を指すことが多いですが、必ずしもそうではなく、前開きタイプ・フルファスナータイプもあります。いわゆる「ウィンドブレーカー」に近いアイテムとも言えます。
値段がおさえられたこともあって、グランドコートに代わり、チームの公式アウターとして採用するチームも増えました。静の時の防寒、兼、動の時の保温を同時にかなえるアイテムです。
(「コート」という言葉は一般に、ヒップを覆う以上の丈長さのあるアウターの事を呼びます。けれど野球アウターでは、このセカンドコートやグランドコートというアイテムを「コート」という言葉で慣例的に表現しています。一般の衣類で言うロングコートや、スポーツで言うベンチコートとは違います。厳密にはハーフコートにさえ属しません。どちらかと言うと「ジャケット」「ジャンパー」という言葉の方が本来は近いアイテムです。)
ピステ
「ピステ」と呼ばれるアイテムは、1枚物のウィンドブレーカーを呼ぶことが多いです。プルオーバータイプが基本です。「ウィンドシャツ」「汗出し」「風よけ」等と呼ばれることもあります。
セカンドコートが台頭していなかった時代から、練習用・アップ用として活用されています。冬場ではアンダーシャツの上に着て、試合にのぞむ場合もあります。これ1枚で寒冷期を過ごすことは難しいですが、逆に言うと、程よい温かさを提供してくれ、春先・開幕期にも重宝するアイテムです。アウター(状況に応じて脱ぎ着する)というよりは、レイヤー(重ね着して着用し続ける)という性格の方が強いアイテムです。
フリースジャケット
2010年頃から野球アウターの主流となりつつあるのが「フリースジャケット」「フリースパーカー」です。その名の通り、フリース素材を使用したアウターです。温かくて軽く、移動時にも練習時にも使える。コート物やウィンド物とちがって気軽に洗濯できるというのもメリットです。
フリースという素材は、そもそも材料費が低めで、表地と中綿の両方を兼ねたようなものです。できあがるフリースジャケットの価格帯は、セカンドコート並みかそれよりもおさえられることが多いです。
フリースパーカの中には、裏地にタフタ系(ウィンドブレーカー系)を使い、セカンドコートと同じく、動作の妨げになりにくいよう工夫したモデルもあります。これには防風性能がプラスされるという利点もあります。
プルオーバータイプが多いですが、フリースへの需要増大から、フルオープンタイプも登場し始めました。
スウェットジャケット
野球アウターとして採用するチームは格段に少ないですが、「スウェットパーカー」「スウェットジャケット」「スウェットシャツ」も保温アイテムとしては十分な魅力を持っています。
スウェットと言うと、綿素材のグレー色で汗を吸うだけ吸って重くなる、というイメージがあります。けれど近年、素材機能が格段に進歩しており、綿ベースではなく、ポリエステルベースになっています。吸汗性やストレッチ性を維持しながら、速乾性・軽量性・保温性も向上しています。いわば、温かいけれど軽量なジャージ素材という位置づけになりつつあります。
(「ジャージ」という言葉も意味合い・定義はいろいろですが、スポーツアイテムでは、伸縮性のある生地、およびそれを主素材としたジャケット系アイテムを指すことが多いです)
ボンディングジャケット
ジャージ素材やニット素材の運動性を持ちながら、ウインドブレーカー素材の防風性・撥水性を取り入れたのが、ボンディング素材です。両方の良い所獲りの超高機能アイテムと言えます。
さらに、衣服内が蒸れないように透湿性に優れたり、フリース要素を取り入れて保温性を高めたりしたアイテムも存在し、次世代をねらうアイテムです。
ベースはニット生地であることが多く、ウィンドブレーカーのようなシャカシャカ感がないのも魅力です。
(ボンディングという言葉は本来、複数の素材を合わせる、といった意味合いです。必ずしも防風・撥水を意味しませんが、スポーツ素材では運動機能+ウィンド機能という意味合いになることが多いです。)