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はじめての野球ユニフォーム作り
〜スピリットをかたちにする〜

2011年1〜12月



2011年12月26日(月曜日)
「あえて脇役のシャツ」

 
野球ユニフォームの主役は胸マークです。胸マークは単にシャツの柄というだけではなく、チームを象徴するロゴマークだからです。胸マークはシャツの単なるパーツではありません。他のスポーツと比べてみても、とりわけ他のプロスポーツと比べてみると、胸にしっかりチームのロゴマークが入っている(スポンサー名ではなく)というのは、野球ユニフォームが誇れる伝統と言えます。チームを象徴するロゴマークを引き立てつつ、さらにそのチームらしさを伝えるのがシャツ本体の役目と言えます。遠くから見たときには残念ながらロゴマークというのははっきり見えません。そんな時でも、シャツ本体のカラーやデザインは、印象深いものです。存在感はチームロゴに、雰囲気はシャツ本体に。
 
 

2011年11月29日(火曜日)
「白シャツが増えている」

 
野球ユニフォームのシャツと言えば、ホワイトを抜きには語れません。ホワイト無地のチームはたいへん少ないですが、切替シャツ(コンビネーションシャツ)ではアクセント色としてホワイトが入っていることが多いです。たとえば主ブラック*副ホワイトといった具合です。サブカラーにホワイトを入れるのは無難と言えば無難なのですが、とりわけ物を作るメーカ側にとっては多くのチームに対応できるカラーなので、しかし、ホワイトというのは色が無いわけではないのです。ホワイトという色があるのです。せっかくの切替デザインでも、ホワイトが入ることによって、チームカラー度が薄れてしまうケースもあります。
また、夏場の暑さを和らげるには、ホワイト主体のシャツが役立ちます。有色シャツとはちがって、蓄熱しにくいからです。ここ2〜3年その認識が広まっているのか、ホワイト主体の注文が増えている傾向にあります。ただし、白1色では面白みに欠けるということで、アクセント色として黒や紺それぞれのチームカラーを採り入れるケースが多いです。
 
 

2011年10月31日(月曜日)
「勝つ色」

 
色には、比べられた時に、目をひく色とそうでない色、勝つ色と負ける色があります。
たとえば金と銀を比べてみた場合には、金の方が目をひきます。胸マークに金色を使い、胸番号に銀色を使うと、胸マークの方が目立ちます。胸マークと胸番号の重要性を比べると、胸マークの方が大きいので、胸マークが金色、胸番号は銀色というのは妥当な配色です。けれど、胸マークが銀色、胸番号が金色と逆の配色になると、今度は胸番号の方に目がゆきがちです。パーツとしての重要性と、視覚効果としての力が逆転してしまうわけです。
色の視覚的な優劣というのは、たしかに色の締める面積・形・位置の影響も大きいのですが、マークのフチ部分のように小さくても十分な影響をもたらします。胸マークが白*黒フチで、胸番号が白*金フチだった場合、胸番号の方に注意が行ってしまいがちです。
 
 

2011年9月30日(金曜日)
「こだわった色味」

 
人びとの記憶に残るようなアイテム、アイコンというのは、色とともに語られることが多いです。カラーというのは野球チームの印象づけにもきっと大切です。単にレッドが自分たちのチームカラーだというだけでなく深みのあるレッドであるとか、単にブルーではなくやや緑がかったブルーだとか、そういった微妙ですが大切こだわりをユニフォームに込められると、より愛着が湧くと思います。色にこだわっているというよりは、色にまつわる物語が生まれてくるといった方が適切かもしれません。
技術的には、ウェアの生地色として採り入れることはまず不可能ですが、マーク部分ならば微妙な色合いも表現することが可能になっています。
 
 

2011年8月31日(水曜日)
「胸番号の配色を変えるのはあり」

 
マーク配色は、胸マークと背番号、胸番号で、同じにすることが多いです。箇所がちがうからといって無闇に配色を変えてしまうと、全体としてちぐはぐな印象になってしまいます。
けれど、胸番号の配色を変えるのはあり。サブカラーを主役にしてもよいと思います。たとえば、胸マークがレッド数字*ホワイトふち*ブラック影となっている場合に、胸番号はブラック数字*ホワイトふち*レッド影とするといったことです。胸番号という限られた箇所、胸マークよりも小さな箇所で、サブカラーを引き立てると、シャツ前面でのバランスがとれてきます。主役は胸マークの文字色、準主役が胸番号の数字色。
背中の番号(背番号)で、胸マークの配色と変えてしまうと、これはちがった意味合い・印象になってきてしまいます。背中は背中だけで見るため、背番号の配色=チームカラーの印象となります。背番号の配色は、胸マークに準じるのが王道と言えるでしょう。
 
 

2011年7月29日(金曜日)
「色づかい、細部の尖り」

 
デザインには多くの要素があり、1つ1つの中身も大切ですが、それらが組み合わさった時の印象というのも大事です。たとえば人の顔で、目や鼻の形で好き嫌いはあるでしょうが、それ以上に顔全体としての印象を人はもっと見るはずです。それと同じように野球ユニフォームでも、デザイン全体の雰囲気というのが大事です。
雰囲気を形成するのは何か。色づかいと細部の尖り。この2つが、野球ユニフォームのデザインを考える時の大事なポイントだと思います。色というのは印象に対してかなり支配的です。まずは色づかいをしっかりおさえるのがポイントです。そして、細部の尖り。シャツの切替パターンだったり、ラインの太さ細さ、マーク書体のはらいの丸みや尖りなど、全体というよりは所々に見られる細部の形も、実は印象に対して支配的です。
 
 

2011年6月30日(木曜日)
「ロゴと柄はちがう」

 
ロゴマークと衣服の柄では、その法則や方向性等はちがいます。ですから、一般のカジュアルウェアで良いなと思える柄でも、野球ユニフォームのロゴマークには、実際の転用・応用することが難しいです。たとえば、すてきなチェック柄の衣服があったとして、それを野球ロゴマークに技術的には応用できますが、どうもしっくり来ない仕上がりになります。もはや野球ユニフォームではない感じです。
では、マークではなく、ユニフォーム・ウェア本体ではどうか。これもまたちがっています。カジュアルウェアでは素材感や色合いもその美しさ・楽しさを構成する要素となっていますが、野球ユニフォームでは限られた素材や色しか採用できません。基本的なシルエットも固定されていますので、どうも自由がききません。カジュアルウェアの持っている良さというものはそのまま当てはまりにくいです。むろん、部分的に当てはめてみても、なんだかへんてこりんな衣装になってしまうだけです。
野球ユニフォームでは、まずロゴマークありき。ロゴマークにはロゴマークの歴史・伝統があって、それを引き継いだデザインでないと、野球ユニフォームらしさが出ない。そして、ウェア本体はあくまでも脇役でしかない。ロゴマークを引き立てるような、少なくともロゴマークと自然に一体となるようなデザインでないといけない。
 
 

2011年5月25日(水曜日)
「白黄赤緑青黒」

 
よく赤黄青という順番で色を呼びますが、色の組み合わせを考える時には黄赤青の方がよいです。黄*青、黄*赤のどちらが判別がつきがたいか(逆に言えば近いか)というと、黄*赤です。ですので、黄赤青の順番となります。
黄と青の中間が緑色です。緑*青、緑*赤のどちらが判別がつきがたいかというと、緑*青です。しかし、緑*黄、緑*赤では、緑*黄の方が判別しがたいようにも見えます。さしあたっては、黄赤緑青の順番とします。
黄赤緑青の中で、もっとも白との判別がつきがたいのが黄、そして黒との判別がつきがたいのが青です。したがって、白黄赤緑青黒の順番とします。より詳細に言うと、黄色の上に白があり、青の下に黒があるというイメージの方が精確です。
野球ユニフォームの配色を考える際に、白黄赤緑青黒の隣り合う色同士の組み合わせは、判別がつきがたいです。もし隣合う色同士を組み合わせる場合には、どちらかの色を明るく或いは暗くすると、コントラストがはっきりしてきます。たとえば、白*黄は区別がつきがたいので、白*黄土(黄の暗い版)とするといくらか判別がよくなりますが、グレー*黄としても、白が黒寄りになった或いは白に色が付いてしまうので判別のよさはそれほど変わりません。たとえば、青*黒は区別がつきがたいので、水(青の明るい版)*黒とするとはっきりしてきますが、逆に紺(青の暗い版)*黒とすると読みづらくなります。
しかし、赤*緑、緑*青は、隣合う色同士のわりに区別がつく方です。とすると、大きな断絶があるのが、白黄/赤/緑/青黒という気もしてきます。色の区分としては黄赤青がよく挙げられますが、古来より白赤緑黒という区分も意外と使われています。
 
 

2011年5月19日(木曜日)
「ラインは1色がよいか、2色以上がよいか」

 
チームカラーは、たいてい2色以上です。たとえば、主ネイビー*副レッドといった具合です。この時に採用するライン色は、1色がよいでしょうか、それとも多色がよいでしょうか? たとえばネイビー1色がよいか、ネイビー*レッドがよいか、ネイビー*ホワイト*レッドがよいか?
一般的にライン色は、1色の方がシャープに見えて、多色になると力強さが出てきます。それぞれ逆の視覚効果もあるわけで、1色だと細く頼りない、多色だと鈍く重たいといったマイナス印象も出てきます。要はその兼ね合いです。
くわえてチームカラーとして、とりわけパンツのライン色は、1色と多色どちらがよいでしょうか? というのは、シャツにおいては、たいていマーク文字*ふちどり(たとえばネイビー文字*レッドふち)において、主カラーと副カラーが採用されていますので、ライン加工はネイビー1色でもネイビー*レッドといった多色でも、好みの事柄と言えます。
しかしパンツ単体で見ると、ホワイトパンツ*ネイビー1色ラインでは、副カラーのレッドが入っていません。どうも物足りないなという気もします。では、ネイビー*レッドの多色ラインとするとどうか。これはこれでチームカラーを全部採り入れていてよいのですが、レッドの比重が強くなってきています。
つまり、ライン色をメインカラーだけにするのか、サブカラーも入れるのかで、ユニフォーム全体でサブカラーがどれくらいの比重を占めるのか、チームがサブカラーをどれだけ重視しているかに影響を与えるということです。メインカラー7:サブカラー3ぐらいの位置づけであるならば、ライン色はメイン1色の方がよいです。ライン色にまでサブカラーが入ると、メインカラー6:サブカラー4ぐらいの印象になってきます。ロゴマークでチームカラーが十分使われているのであれば、ライン色はメインカラーだけでも十分というのが基本路線です。
 
 

2011年5月11日(水曜日)
「2色の主・準・少」

 
2色のパターン、とりわけウェアの配色について考えてみる。ただし、ホワイトとグレーとの組み合わせはのぞく。
需要もしっかりあるしデザインとしても多くの人がカッコイイと思う主流のパターンは、ブラック*レッド、ネイビー*レッド、レッド*ブラック、レッド*ネイビー。この4つだけだろう。
そこそこの需要が期待できる準主役級となると、ブラック*ブルー、ブラック*イエロー、ブルー*オレンジ、グリーン*イエローだろう。
意外と映える組み合わせだけれど実際の需要はあまりないのは、ブラック*エメラルドグリーン、ブラック*ピンク、ブルー*ブラック、ブルー*レッドにとどまらず、数限りなく出てくる。
もし、あまり見られないという意味でユニークなチームカラーを採用したいのならば、ブラック・ネイビー・レッドの3色を外す。これが基本となるだろう。しかし、この3色なくして、野球ユニフォームらしいデザインを作ろうとなると、なかなか険しい道。
 
 

2011年5月6日(金曜日)
「オセロよりは複雑な野球ユニフォーム作り」

 
オセロというゲームがあるよね。
このゲームで勝つには、たとえば自分が白だったとして、四隅全部に白を置くことができればまず勝てるよね。でも、たいていの人はどうしたら四隅をとれるのか分からないんだ。
時には思わぬ一手で黒にたくさんひっくり返されてしまうかもしれない。けれど、待ったをしたり、同じところにはもう白を置けたりしない。できることは白を一手一手つみかさねて、白を多くすることだけだよね。
四隅全部をとるのはなかなか難しいし、だから真っ白になって勝つことはまずない。それに、全部の四隅がうまるのはゲームの最後の方なんだ。
でもオセロに勝っても負けても、善戦していても苦戦していても、人はいつだってゲームを楽しむことだけはできると思うんだ。
 
 

2011年4月28日(木曜日)
「グレーとシルバー、オーカとゴールド」

 
グレーとシルバー(銀)はちがいます。ホワイトを暗くするとグレーになります。しかし、シルバーは、薄いグレーとして表現される場合もありますが、原理的には暗くなるのではなく、逆に白よりももっと明るくなって照り返し・輝きが出るようにしたものです。強い明るさを出すので、自分自身の弱い明るさのところが暗く見える・グレーに見える、と言えます。太陽の中で、周りと比較して温度が低いところは暗い黒点として見えますが、その黒点でさえ明るさ・温度としては相当なものなのです。
オーカとゴールドも同じです。イエローを暗くするとオーカ(黄土)、明るくするとゴールド。ときにゴールドは、オーカとして表現されることがありますが、それは素材等の都合によって輝きを表せず、色合いとして近いカーキが代用されているだけです。イエローを色合いとして明るくするだけでは、レモンイエローやアイボリィになるだけで、かえってゴールドに見えなくなります。
野球ユニフォームの生地・素材で、そもそも本来のシルバーやゴールドを素材の特性上表現できない(光の反射性が低い)ものは、一番明るいと言われるホワイトでシルバーやゴールドに匹敵しない以上、どう色合いを調整してもできません。グレーかオーカで代用するだけです。
 
 

2011年4月25日(月曜日)
「物語は力になる」

 
たとえばチームカラーが赤のチームがあるとして、単にユニフォームが赤であることは、それ以上でもそれ以下でもありません。しかし、赤を採用したことの由来、意味があると、そこにふくらんでくるものがあります。たとえば「我がチームは最後の1球まで一生懸命プレイをするんだ。その情熱を赤色に込めた。」という由来を知ると、選手が(あるいは応援者や敵側が)ユニフォームを見る目が変わります。9回裏二死無塁、点差9点というとても苦しい打席に立ったときにでさえ、ふとユニフォームが力を与えてくれるかもしれません。色は色、デザインはデザイン。それは外形にすぎませんが、外形になにがまとわりついているのかは、人が(思いこみで)決めます。
 
 

2011年3月30日(水曜日)
「黒は青に近い」

 
黒は、赤や黄よりも、青に近いです。黒と赤は隣り合ってもちがいがはっきり分かります。黒と黄も同様です。ですが黒と青が隣り合うと、境目が分かりにくくなります。マークの配色を考えるときに、たとえば黒文字*赤フチは判読しやすい組み合わせですが、青文字*黒フチとなると青を明るめにしないとちがいが出ません。
逆に言うと、黒と青は、相性が良いとも言えます。同じ系統に属するカラーと見えるからです。たとえば黒*白*青とすれば、黒と青のそれぞれが目立ち、全体の色合いも統一されているように見えるのです。
黒青系と赤系、黒青系と黄系は、基本的には反発しあう色の組み合わせとも言えます。系統のちがう色がとなり合うと(ぶつかり合うと)、強烈さの印象となります。赤がオレンジやピンク、黄がアイボリィやブラウンになっても、程度が和らぐだけで方向性はいっしょです。
 
 

2011年2月16日(水曜日)
「中和させるホワイトの功罪」

 
マーク配色にホワイトを加えると、他のカラーのもつ強さをやわらげてくれます。しかもホワイト自体はあまり主張しません。とりわけレッドやブラックなどの強烈さが目立つカラーとは相性がよく、マーク配色で困った時にはホワイト色を入れることも少なくありません。
けれどやはり、そのホワイトのやわらげる力・方向性というのが発揮されては困る場合もあるわけです。たとえば、ネイビー色シャツに、オレンジ色のマーク。ホワイト色のふちを付けたり、ライン加工を付けたりしても、それはそれで魅力的ですが、ネイビーとオレンジだけで構成された時のある種の大胆さや鮮烈さは失われてしまいます。
 
 

2011年2月4日(金曜日)
「帽子マークは2色へ」

 
最近、胸マークや背番号が3色のユニフォームが増えています。昇華プリント技術の導入・向上で、手軽に3色マークを採用できるようになったからです。さて、帽子マークはどうでしょうか? こちらも昇華プリント技術を使うことができますが、やはり帽子マークは糸のみで仕上げる直刺繍が主流です。豪華で気品のある仕上がりにたいする需要は、今後も変わらないでしょう。直刺繍は3色になると、難易度が上がるので単価も高くなり、採用するチームもぐんと減ります。けれど、胸マークや背番号が3色になると、やはり帽子マークも、3色までゆかずとも2色は欲しいところ。帽子マークが1色では、ユニフォーム全体のデザイン・バランスを見た時に物足りないなと感じることが多いです(あくまでも胸マーク等が3色の場合)。
3色の時のチームカラーというのは、メインカラー*サブカラー*第2サブカラーで構成されます。帽子本体にメインカラーを使うと、帽子マークにはサブカラーの2つを使いたいところ。サブカラーの片方だけでは、帽子だけで見た場合に全てのチームカラーを満たしていないのです。ツバにサブカラーを使えればよいのですが、ツバ別色となると、今度は帽子本体をオーダにする必要が多くなってしまいます。
 
 

2011年1月21日(金曜日)
「引き継ぐのは感傷?」

 
ユニフォームをすでに持っているチームが作り替える時、シャツの系統もロゴマークもすべて変えてしまうケースが意外と多いです。せっかく変えるのだから、ぜんぶ変えてしまおう、新しくしようというわけです。プロ球団でもそういうことはなくはないのですが、せめて雰囲気・系統だけは引き継がせるようです。やはりファンがいますから急激に変えてしまっては、反発・離れが起こってしまいます。
はたして草野球チームではどうでしょうか。プロ球団のように外部の目を気にする必要はありませんから、メンバーが納得していればユニフォームのデザインを全部変えてしまってもよいと言えます。ただ、やはりどこかもったいないという思いもあります。今までみんなで一緒に過ごしてきた時間を、積み重ねてきたプレイを、捨て去ってしまうような気もするのです。

 
 
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