2010年12月24日(金曜日) 「プロ球団のデザインずばり」 プロ球団をお手本としてユニフォームを作ることがあります。人気のあるプロ球団というのは、自分たち以外のチームもお手本とするので、デザインがかぶってしまうのではないかと心配になるものです。たしかに、人気のあるプロ球団というのは集中していて10チームほどです。ですが現在、プロ球団をベースとするチーム自体がとても減っているので、20〜30チーム集まる大会・リーグでは、デザインがかぶる確率は低くなっていると言えます。 2010年11月24日(水曜日) 「らしさ、伝統」 野球ユニフォームらしいというのは大事です。単にデザインとして素晴らしいということが成立することはありますが、それだけでは欠けるものがあります。「らしさ」や「伝統」というのは、思考の、デザインの自由を奪う面もありますが、先人の良いところをしっかり受け継いだ(そして発展もさせた)という意義もあります。 野球ユニフォームらしさの感覚を一番学べるのは、やはりプロ球団のユニフォームです。彼らのユニフォームを、デザインを、とことん学んでみる。馴染んでみる。 2010年10月20日(水曜日) 「帽子を洗濯する」 野球ユニフォームのキャップは、基本的に、洗濯されることを前提としていません(極一部の製品はウォッシャブル=洗濯可能ですが)。しかし実際、けっこう帽子を洗濯する人は多いんですよね。たしかに頭も汗をかき、帽子も汗汚れがありますから、洗濯したい気持ちもわかります。 洗濯は、帽子の型くずれや色落ちの原因になりますが、あえて洗濯に強い順位を挙げると、オールメッシュ/シャツ生地メッシュ/バックメッシュ/オールニット/ウール系素材です。オールメッシュはプラスティックのような作りで、生地っぽさがなく、洗濯に一番強い(当然汗にも強い)です。シャツ生地メッシュは、ユニフォームシャツに使われる生地を帽子表地に採用したものですから(シャツは洗濯するのが当然)、これも意外と洗濯に強いと言えます。ニット系、ウール系になりますと、綿等に比べると洗濯に強いポリエステル系ではありますが、生地感・起毛性が出てくるので、それがやはり洗濯には不向きです。 2010年10月19日(火曜日) 「一回り小さく、二回り大きく」 野球ユニフォーム作りでは、マークの大きさを微調整することがあります。微調整する時のコツは、小さくするときは一回り、大きくするときは二回りです。小さくするときは10%ほど小さくするだけで、かなり小さくなったように感じられます。大きくするときはその逆。思い切って20%近く大きくした方が印象のちがいがしっかり出てきます。 2010年9月27日(月曜日) 「ステージを上げる」 自分の衣装棚を見てみると、もう着ないという服が誰でも入っているものです。人によっては、それが半分近く占めることもあるかもしれません(笑)。衣服は、その人の好みや年齢、状況によって、変わってゆくものです。また、現在着ない服というのは、単に自分に合わないというだけでなく、むしろ着るとかっこわるいという場合も多いです。自分の「ステージ」が上がると、着る服も選ぶ必要が出てきます。 野球ユニフォームも同じで、新しいユニフォームができあがってくると、なぜか古いユニフォームがとてもかっこわるく見えることが少なくありません。単に好みが変わったというだけでなく、やはり新しいユニフォームにおいてなにかが洗練されて、「ステージ」が上がるということが多いのです。 2010年8月26日(木曜日) 「ラグラン袖は幼く見える」 ラグラン袖とは、肩から袖にかけてひとつのパーツで作られたものです。特注シャツのラグラン袖で身頃と袖のカラーがちがう場合、一般のカジュアルウェアでもそうですが、幼く・かわいく見える傾向にあります。おそらくは、肩の部分が狭く見える、肩がなだらかに見えることがその要因です。 2010年8月3日(火曜日) 「ストライプ生地は固く重い」 ストライプ生地は、他の生地と比べると、多少なりとも固く重いです。縞模様を表現するために、たとえば白*黒縞の場合、白生地*細い黒生地*白生地*細い黒生地*白生地....となり、複数の生地を縫い合わせたようになるためです。 最近では技術の進歩によって、ずいぶんと軽量化され、固さも重さも他の生地と遜色なくなりました。生地が良くなれば、ストレッチ性や吸汗速乾性もよくなります。機能面からストライプ・ユニフォームを敬遠してきたチームにも一考の価値ありです。 また、縞模様をプリントで表現するというストライプ生地も登場しています。生地同士の織りがなく、無地の生地と同様に1枚生地となります。 2010年7月26日(月曜日) 「縮む・細くなる・小さくなる」 野球のマーキングにとって頭に入れておきたいのは、実際の加工では、設計段階よりも縮む・細くなる・小さくなるという点です。1mmにも満たない変化であることが多いのですが、1mmを問うのがマークの仕上がりです。刺繍糸はぎゅっと縫いつけて細くなりますし、ベースとなるマーク生地は熱裁断によって縮みます。 とりわけ注意したいのは、縁取りの幅と、デザイン上の小さな穴です。設計段階でのフチ幅が狭いと、実際にはさらに縮むので、あまりにも細いフチというのが技術的な困難を招きます。デザイン上の小さな穴(たとえば「B」の上下にある2つの穴)は、設計段階でしっかりあけておかないと、仕上がってみると、つぶれて見えにくくなる時があります。 2010年7月22日(木曜日) 「隙間があった方が離れている」 空間が無いということは表現できません。隙間があるということを表現するのみです。何であれ、それが有る以上、無いわけがないからです。 ワッペンにはいろいろなパーツを配置します。重なり合う時に、色のちがいでパーツ毎の区切れを表現することもできますが、色の区切れがあったとしても、連続してずっと有るということでは、区切れがないとも見えます。そうすると、せっかくの配置・強弱が活かせません。ほんのすこしでも、パーツ同士の間に空白を設けることで、パーツ同士がわかれているということがより伝わってきます。重ね合わせる時は、わずかに細い輪郭線・縁取り線でも入っていると、まったくちがってきます。 2010年6月30日(水曜日) 「売れている物が欲しい物、応えた物が欲しくなる物」 どんな商品・商売でも言えることですが、実際に売れている物が、ユーザの欲しい物です。欲しくない物は、たとえ1円だとしても買いません。どんなにメーカや販売店がアピールしても、買ってもらえません。タダだと言って配っても、もらってもらえません。野球ユニフォームも同じ。ユーザが欲しい物が売れる。欲しくない物は売れない。たとえば限られたデザイン選択肢の中で、売れている物があれば、それがやはり現実的な選択肢の中でユーザが欲しい物です。本当にユーザが欲しくなければ、その選択肢すべてが売れません。絶対的な必要性や緊急性のある食糧や医療とちがって、野球ユニフォームは余暇の商品です。野球をすること自体が余暇です。必要性・緊急性よりは欲求。ユーザが欲しければ売れる。そうでなければ売れない。 だとしても、これは後追いの説明。結果としてそうだったということが分かるだけです。いま売れている物を作り続けることが、メーカや販売店の努めではありません(いずれ廃れるでしょう)。売れる売れないは結果。単にユーザが欲しい(だろうと思われる)物に焦点を当てればよいだけです。あるいは、実際にユーザが欲しいと声を挙げてる物を作ればよいだけです。チーム毎の受注生産品である野球ユニフォームだからこそ、シンプルな対応が一番です。 2010年5月18日(火曜日) 「近づいて見てみれば良いものでもない」 物事は近づいて見てみれば良いものでもありません。引いて、見る。全体を見る。たとば素材感というのは、アップ図で見ることも必要ですが、それだけでは全体の仕上がりの雰囲気をつかめません。たとえばロゴマークというのは、ひとつひとつの文字の形も大事ですが、つづりとなってロゴを形成する時の全体バランスも大切です。たとえば帽子は、それ自体として利用できるアイテムですが、やはりシャツやパンツも含めてユニフォーム全体の中での存在として見ることも大事です。 2010年5月17日(月曜日) 「動かして考えられるか」 野球ユニフォームは飾り物ではありません。人が着ます。そして動きます。プレイの中でユニフォームがどう見えるか、あるいは、選手9人がそろった時にどう見えるか、相手チームにはどう映るか。着ている選手がどう感じるか。そういった視点まで広げることができれば、野球ユニフォーム作りにおけるある種の到達点と言えるかもしれません。 |